社労士事務所 Office Follow
助成金ニュース

中小企業が助成金を活用して「働き方改革」を実践する方法

助成金ニュース 2017年09月号

働き方改革とは企業にとっての人材活用戦略である

働き方改革は、政府の「1億総活躍社会」実現に向けた施策の1つに位置づけられ、中小企業にとっても重要な経営課題となっています。しかし、「働き方改革」という言葉だけが独り歩きしてしまい、中小企業においては「何をすればよいのか?」「どこまですれば十分なのか?」がわからないという経営者も多いと思います。

本稿では、働き方改革を『社員が働きやすい職場環境を整備し、社員区分ごとに適切なキャリア支援を行うことで、社員のスキルアップ・モチベーションアップを図ることで、労働生産性を高め、企業の業績アップを実現させるための人材活用戦略である』と定義をさせていただきます。

ところで、「社員が働きやすい職場環境」とは、どのような職場(会社)なのでしょうか? それは、以下の3つの条件が整備されている状態のことです。

<法令が遵守されている>

社員を雇用する会社には、労働基準法をはじめとした法令を遵守する義務があります。残業代を法定通りに支払っていない、サービス残業が日常化している、有給休暇を与えてないといった法令違反があると、その会社はブラック企業の烙印を押されてしまい、労働力を確保(社員の採用・定着)することが難しくなってしまいます。これからは労働人口が減少しますので、社員から選ばれる会社でなければなりません。そのためにも、法令を遵守することは最低限の条件と言えるでしょう。

<安全配慮義務が果たされている>

企業には法令を遵守することはもちろん、社員を安全に働かせる義務(安全配慮義務)が課せられています。長時間労働による健康上の問題や、セクハラ・パワハラなどの行為によって社員に精神的な被害を与えた場合には、会社は損害賠償の責任を負わされる場合もあります。そのようなことがないように、企業には社員の労働時間の管理を行う、ハラスメント対策のためのルール作りや社員研修を実施するいった対応が求められています。

<職業能力の開発・キャリア支援を行っている>

法令を遵守して、社員が安心して働ける職場環境を整備するだけでは、会社が充分に責任を果たしているとはいえません。最近では、社員の職業能力を開発して社員のキャリア支援を行うことも会社の義務と考えられるようになってきているからです。これまでは、企業にとって必要だと思われる知識やスキルを習得させるために、会社は社員研修を行ってきました。しかし、これからは個々の社員ごとのキャリアを支援する立場で社員研修を実施するという考え方が重要になっています。社員のキャリアを支援することが、結果として会社の業績アップにつながるということです。

以上のように、社員が「働きやすい職場環境」とは、「法令が遵守されている」「安全配慮義務が働されている」「職業能力の開発・キャリア支援を行っている」という3つの条件が整っている職場のことです。こうした職場環境を整備するために実施する施策が、「働き方改革」なのです。労働力人口が減少するこれからの時代に、企業は人材活用戦略の一環として、この働き方改革に積極的に取り組む必要があるでしょう。

  

中小企業が取り組むべき「働き方改革“10のテーマ”」

では、中小企業で「働き方改革」を実践するためには、具体的に何をすれば良いのでしょう?  ここでは、「働き方改革」を以下の“10のテーマ”に分けて考えてみたいと思います。

①多様な働き方の整備

 社員が働きやすい職場にするためには、働く時間や場所、あるいは仕事の内容などについて複数の選択肢を設けることが重要です。正社員であっても、転勤や職種変更がない、残業なしで働くといった限定社員制度を導入するといった企業も増えています。在宅勤務(サテライトオフィスやテレワーク)などの導入も検討課題になります。

②非正規社員の待遇改善

 パート社員や契約社員などの非正規社員と、正社員との待遇格差が問題になっています。しかし、これからは正社員と同じ仕事をしているパート社員等については、時間あたりの賃金において同等の処遇(賃金や教育、福利厚生など)をしなければなりません。いわゆる「同一労働同一賃金」の問題です。そのために、パート社員等にも賃金制度や評価制度を整備する必要があります。

③女性の活躍推進

 「女性活躍促進法」により平成28年4月より、自社における①女性の活躍状況の把握・課題分析、②行動契約の策定・届け出、③情報公表などを行うことが求められています。(ただし、301人未満の会社は努力義務)こうした法令に対応することも、働きやすい職場環境を整備することにつながります。

④高齢者の就業支援

 現在、多くの企業の定年は60歳となっておりますが、本人が希望すれば65歳まで働ける制度を導入することが法律上義務づけられています。しかし、少子高齢社会によって公的年金の支給開始年齢が65歳以降に引き下げられることが検討をされています。そうなると、企業の定年を65歳に引き上げる、あるいは70歳までの継続雇用制度を導入するといったことが求められるようになります。そのためには、賃金制度や退職金制度の見直しも含めたトータルな制度設計が必要になるでしょう。

⑤若者の雇用促進

 新卒採用段階でのミスマッチによる早期離職を解消するために、労働条件を的確に伝えることに加えて、平成28年3月からは若者雇用促進法により就業実態等の職場情報を公表することが義務づけられるようになりました。具体的には、①募集・採用に関する情報(採用者数、離職者数、平均勤続年数等)、②職業能力の開発および向上に関する取組の実施状況(研修、自己啓発支援、メンター制度、キャリアコンサルティング制度の有無等)、③職場への定着促進に関する取組の実施状況(月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業取得者数、役職者に占める女性の割合等)などの情報を提供しなければならなくなりました。つまり、雇用データの把握・公表、そして若者が定着するような制度導入が求められているのです。

⑥育児と仕事の両立支援

 育児と仕事が両立できるような制度の導入・運用が求められています。具体的には、育児休業の取得促進(男性の育休取得を含む)、育児休業取得後の職場復帰支援が大きなテーマです。育児休業の取得促進のためには、育休復帰支援プランを作成して業務の引継ぎや代替要員の確保を行うこと、育休取得後の職場復帰支援については、育児短時間勤務制度の拡充などが必要となります。

⑦介護と仕事の両立支援

 2025年には団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上となり、本格的な高齢社会を迎えることで、企業にとっては介護離職の問題が深刻になります。出産・育児とは違い、介護というのは突然にやってきます。社員の介護離職を防止するためには、介護休業等に関する会社の制度について日頃より社員に周知しておくことはもちろん、管理職に対する教育などを実施しておくことが重要です。

⑧長時間労働の是正

 労働基準法が70年ぶりに大きく改正される予定です。残業時間に上限が設けられること、違反した企業には罰則が課せられることが大きなポイントです。そのため、各企業においても労働時間(残業時間)を削減することが喫緊の課題となっています。まずは自社の労働時間の現状をきちんと把握し、課題を抽出して、具体的な対策を講じるという全社的・組織的な取り組みが求められています。労働時間対策に関して、労使で協議をする場を設けることも効果的です。

⑨ハラスメント対策

 企業の安全配慮義務の中で、長時間労働の是正とともに大きな課題となっているのがハラスメント対策です。特にパワハラについては、都道府県労働局や労働基準監督署等への相談が増加を続け、社会的な問題として顕在化してきています。職場のパワーハラスメントは、企業にとっても業績悪化や貴重な人材の損失につながるおそれがあります。 また、企業として職場のパワーハラスメントに加担していなくても、問題を放置した場合は裁判で使用者としての責任を問われることもあり、イメージダウンにつながりかねません。こうした悪い影響や損失を回避するためにも、企業において具体的な取組を進めることが求められています。

⑩職業能力の開発・キャリア支援

 企業が成長するためには、社員の能力開発が必要なのは言うまでもありません。そのため、多くの企業では教育体系を整備して、計画的・継続的に社員教育を行っています。しかし、中小企業においてはこうした教育体系が未整備の会社も少なくありません。そのため行政では、「キャリアマップ」「職業能力評価基準」「モデル評価シート」「教育訓練カリキュラム」などのツール(標準的なモデル)を業界ごとに整備をして、中小企業の職業能力開発の支援を行っています。こうしたツール類を活用することで、比較的短期間で、コストや労力をかけずに制度の整備をすることが可能です。

以上のように、中小企業が取り組むべき働き方改革には10のテーマがあります。もちろん、すべてのテーマに取り組むことは難しいと思いますので、各企業の実情に応じて、必要と思われる施策から順番に取り組んでいただくのが現実的だと思います。

働き方改革には助成金が活用できる

 これまで「働き方改革とは何か?」「具体的に何をすればよいのか?」ということについてお伝えをしてきました。しかし、中小企業がこうした施策を実施するためには、時間と労力、つまりコストの問題があるでしょう。でも、ご安心下さい。
なぜなら、働き方改革の施策に取り組む企業に対しては、国から助成金が支給されるのです。具体的には、先ほど述べた“10のテーマ”に対して、それぞれ以下の助成金を活用することができます。

①多様な働き方の整備 → キャリアアップ助成金(正社員化コース)
②非正規社員の待遇改善 → キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース等)
③女性の活躍促進 → 両立支援助成金(女性活躍加速化コース)
④高齢者の就業支援 → 65歳超雇用推進助成金)
⑤若者の雇用促進 → 職場定着支援助成金、人材開発支援助成金
⑥育児と仕事の両立支援 → 両立支援助成金(出生時両立支援コース、育児休業等支援コース)
⑦介護と仕事の両立支援 → 両立支援助成金(介護離職防止支援コース)
⑧長時間労働の是正 → 職場意識改善助成金
⑨ハラスメント対策 → 職場定着支援助成金
⑩職業能力の開発・キャリア支援 → 人材開発支援助成金

まとめ

本稿では、「働き方改革とは何か?」「具体的に何をすればよいのか?」ということを解説させていただいた上で、中小企業が助成金を活用して働き方改革に取り組む方法についてお伝えをしました。冒頭でも述べました通り、働き方改革というのは国から強制されて行うものではなく、「これからの企業の活用戦略」として実施すべきものです。労働力人口が減少するこれからの時代において、優秀な人材を確保して生産性を向上させることは、企業にとっても非常に重要な経営課題です。御社でも是非、働き方改革に積極的に取り組んでいただきたいと思います。


  本内容についての解説動画をご覧いただけます。
ご希望の方は以下フォームにメールアドレスお名前を入力して「動画を見る」ボタンをクリックして下さい
お名前必須
メールアドレス
必須

ご入力いただいた情報は弊社に送信されます。

助成金に関するご相談・お問い合わせはこちら
社労士事務所 Office Followtel: 03-6434-0713 
×

弊社は助成金申請手続きをはじめ、助成金に関する様々な業務を行なっております

お問い合わせ内容
必須
助成金新設手続きについて相談したい助成金コンサルティングについて聞きたい
お名前
必須
メールアドレス
必須


社労士事務所 Office Followtel: 03-6434-0713
107-0061 東京都港区北青山3-2-1 ムラカミビル5F