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助成金ニュース

助成金を活用してパート社員の能力アップ・定着率アップを図る方法

助成金ニュース 2017年06月号

パート社員の処遇改善に使える「キャリアアップ助成金」とは?

雇用の助成金には、大きく分けて「正社員向け」のものとパート社員等の「非正規社員向け」のものがあります。
今回ご紹介するキャリアアップ助成金は、「非正規社員向」けの助成金になります。
日本の労働力人口に占める非正規社員の割合は今や4割にも上っておりますが、彼(彼女)らの処遇が正社員に比べて低すぎるとの指摘がされています。
こうした現状を踏まえ、非正規社員の企業内でのキャリアアップなどを促進するために、「正社員化」「人材育成」「処遇改善」の取組を実施した会社(事業主)に対して支給されるのがキャリアアップ助成金です。このキャリアアップ助成金は、現在の助成金制度の中でもっとも多くの予算が計上されており、中小企業においても積極的に活用されてます。

コースの新設・拡充によりさらに使いやすくなりました

平成29年度からはコース区分の変更(新設・拡充)があり、キャリアアップ助成金がさらに使いやすくなりました。
新しい制度は、以下の8つのコースに分かれております。

(1) 正社員化コース(正社員等に転換した場合)
(2) 人材育成コース(教育訓練を行った場合)
(3) 賃金規定等改定コース(賃金アップを行った場合)
(4) 健康診断制度コース(法定外の健康診断を行う制度を導入した場合)
(5) 賃金規定等共通化コース(正社員と共通の賃金規定等を適用した場合)
(6) 諸手当制度共通化コース(正社員と共通の諸手当制度等を導入した場合)
(7) 選択的適用拡大導入時処遇改善コース(基本給を増額させて社会保険に加入させた場合)
(8) 短時間労働者労働時間延長コース(所定労働時間を延長して社会保険に加入させた場合)

なお、上記すべてのコースで「生産性要件」(付加価値率アップの要件を満たした場合に助成金が加算される仕組み)が導入されているのも、平成29年度からの変更点になります。

「正社員転換制度」を導入してモチベーションアップを図る

パート社員等を正社員等に転換する場合には、「正社員化コース」を活用することができます。この助成金は、パート社員や契約社員などの有期契約労働者を正社員に転換した場合に、1人あたり57万円(生産性要件を満たした場合は72万円、中小企業の場合)が支給されます。

たとえば、「正社員並みに働いている優秀なパート社員」がいる場合、この人を正社員に転換をさせると上記の金額が受給できます。すでに正社員並みに働いている(社会保険にも加入している)のですから、正社員にすることに大きな問題(費用負担等)はないでしょう。ただし、正社員にすることによって賞与や退職金などの支給対象者になる場合がありますので、そのことについての検討は必要になります。

あるいは、これから社員を採用する予定の会社であれば、まずはパート社員(契約社員)として有期契約をして、その人の働きぶりを評価してから正社員に転換させるという方法でも、この助成金を活用することが可能です。これは、「新しい採用システム」としてキャリアアップ助成金を活用する方法になります。
なお、この助成金を受給するためには、会社のルールとして「正社員転換制度」を導入する必要があります。制度として導入するとは、就業規則に以下の内容を記載して労働基準監督署に届出をする必要があります

・転換の対象となる社員の要件(勤続〇年以上等)
・転換を実施する時期(毎年〇月〇日等)
・転換の手続き(所属長の推薦、試験の実施等)

パート社員等の非正規社員でも正社員になれる道があれば、彼(彼女)らのモチベーションも高くなり定着率アップにもつながります。また、正社員への転換制度が導入されている企業は、パート社員の募集や採用をする上でも有利です。しかも、転換制度を導入するためには助成金を活用することができるのです。ですから、あなたの会社でも正社員転換制度を導入してはいかがでしょう?

「パート社員の教育」を実施してスキルアップを図る

「人材育成コース」とは、パート社員に教育を実施した場合に支給される助成金で、以下の訓練を実施した場合が対象になります。

・一般職業訓練(いわゆるoff-JT=業務外の教育訓練)
・有期実習型訓練(OJT=業務を通じた教育訓練とoff-JTを組み合わせた3~6カ月間の教育訓練)

上記の訓練に要した経費(実費助成、上限額あり)と訓練期間中の賃金(1時間あたり760円)が助成金として支給されます。ただし、一般職業訓練の場合には原則として20時間以上、有期実習型訓練の場合には6ヵ月あたりの時間数に換算して425時間以上の訓練であることが必要です。
たとえば、パート社員を採用して、有期実習型訓練を行って6カ月間(425時間)の教育をした場合には、以下の助成金が支給されます。
・経費助成: 30万円(200時間以上の場合の上限額)・賃金助成: 32万3000円(760円×425時間)
これはかなり大きな金額だと思います。なぜなら、賃金助成が1時間あがり760円支給されるということは、パート社員を時給1000円で雇ったとしても、実質は時給240円で雇うことができたことになるからです。また、1年度1事業所あたりの上限額も1000万円と大きな金額となっております。パート社員をしっかりと教育をして戦力にしたいという企業には、ぜひ積極的に活用していただきたい助成金です。
しかも、訓練を修了してスキルアップを果たしたパート社員をさらに正社員に転換することによって、前述の「正社員化コース」の助成金を受給することもできます。これは「一粒で二度おいしい」助成金の活用方法です。

「パート社員の賃金制度」を導入して定着率を高める

パート社員が採用できない、採用しても定着しない最大の理由は、やはり給与の問題かもしれません。パート社員の給与の問題では、正社員との賃金格差が指摘されています。正社員と同じような仕事をしているのに、パート社員というだけでなぜ給与が少ないのかという問題です。いわゆる同一労働同一賃金の議論です。

しかし、パート社員の給与に関する問題はこれだけではありません。同じ仕事をしているパート社員同士でも時給の違いがあり、その違いを会社がきちんと説明できないために、パート社員が不満を持つケースがあります。パート社員の時給というのは、労働市場での需給バランスにより決定されることも多く、同じ仕事をしていても雇われた時期によって時給が違うことがあるのです。こうしたパート社員の賃金問題を解決するためにも、キャリアアップ助成金を活用することができます。

「賃金規定等改定コース」を活用すればパート社員の賃金アップをすることができます。この助成金は、パート社員等の賃金を2%以上増額改定した場合に支給されるというものです。パート社員7~10名の会社の場合には、28万5000円が支給されます。これはパート社員1人あたり約3万円の支給額です。たとえば、時給1000円のパート社員の時給を1020円に昇給させます。このパート社員が年間1200時間働くとすると、会社としては年間2万4000円(20円×1200時間)の人件費アップになります。しかし、その負担増は全額助成金でカバーすることができます。ただし、助成金でカバーできるのは1年間だけですから、2年目以降は会社の持ち出しになります。それでも、現在は人材不足ですから、時給を20円アップさせて優秀なパート社員を確保するという考え方もあると思います。

その他にも、「賃金規定等共通化コース」や「諸手当制度共通化コース」などがあり、助成金を活用して正社員との賃金格差を是正する仕組みが用意されています。結局のところ、正社員との賃金格差を是正するためには、パート社員の等級制度や賃金制度を整備することが必要になるということです。また、そうすることでパート社員同士での処遇の違いについても明確に説明ができるようになります。そのためにも、きちんとした制度を整備することが重要だと思います。
なお、パート社員の賃金制度を導入するにあたって、自社で制度を設計することが難しいのであれば、コンサルティング報酬を支払って専門家に依頼するという選択肢もあるでしょう。その場合でも、助成金を活用すれば会社としての経費負担を最小限に抑えることができるのです。

まとめ

本稿では非正規社員向けの助成金であるキャリアアップ助成金についてお伝えしてきました。労働力人口が減少する中、これからの企業にとって人材の確保は大きな経営課題になります。この問題に対する現実的な解決策は、パート社員等を積極的に活用することだと思います。しかし、そのためには「正社員転換制度を導入する」「教育訓練を実施する」「賃金制度を導入する」といったパート社員の処遇を改善することが必須になります。だからこそ、助成金を活用することが重要になるのです。

今回ご紹介したキャリアアップ助成金を活用すれば、企業の費用負担は最小限でパート社員の処遇改善を行うことができ、彼(彼女)らのスキルアップ・モチベーションアップを図ることできます。また、そうすることで最終的には企業の業績アップにつながります。

あなたの会社でもキャリアアップ助成金を活用して、パート社員の処遇改善に取り組んでみてはいかがでしょう?


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